研究概要 |
自己抗体イディオタイプ(Id)の研究は自己免疫疾患の病因解明、特に自己抗体の産生及び抑制のメカニズムを知るために重要である。我々は60年度に千例の単クローンリウマチ因子(mRF)に対して夫々、単クローン抗Id抗体(mA-Id)を作成した。61年度はこのmA-Idを使って各種疾患のRFやM蛋白の共通IdとB細胞表面のIdやB細胞分化について検討した。(方法)シェーグレン症候群(SS)患者3例(IgM-K,IgA-L,IgA-K)とマクログロブリン血症(WM)患者1例(IgM-K)のmRFに対してmA-Idを作成した。(1)Idの抗原性部位の決定はSDS-PAGEウエスターンブロットにて行った。(2)共通Idの検索はドットインムノブロットと血清の寒天電気泳動インムノブロットで行った。(3)B細胞表面のIdはmA-IdとA-Igによる二重蛍光抗体法で行った。 (結果と考察)4種のmA-Idの検出するRFのIdはK鎖(IgM-K,2例),μ鎖、K鎖,α(?)鎖(IgA-L),μ鎖とα-K鎖(IgA-K)であった。共通IdはSS患者のmRF(7例)M蛋白(10例),クリオグロブリン(10例)の40-90%に認められた。マポリクローナルRF血清(50例)の6-40%にあり、RF活性を有さないM蛋白(24例)にも少数例認められた、しかも、H鎖、L鎖の違いをこえて反応する事が分った。この事はRFの遺伝子ファミリーが広く存在し、特にSSではその発現が強くみられる事を示し、今后はこのようなRF遺伝子の発現の機構を明らかにする必要がある。B細胞表面IdはmRFを有するSS患者末梢血(4例)に0.3-11.8%にみられた。このようなB細胞はPWMと1週間培養する事により胞体内Idを産生するプラスマ細胞へ分化した(3例)。これら患者ではB細胞レベルでで単クローン化が生じており、in Viroでプラスマ細胞へ分化するが、これら何らかの機構で促進されたり抑制されたりする事が考えられ、このような機構の解明が今后の1つの課題である。
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