研究概要 |
1.腹部動脈(脾動脈,上腸間膜動脈)血流量を超音波パルスドップラー法にて非侵襲的に測定する方法を確立する為に、雑種成犬をネンブタールにて全身麻粋し、開腹し、脾動脈及び上腸間膜動脈を剥離露出し、電磁流量計プローブを装着して瞬時血流量を測定した。又同時に超音波パルストップラー複合装置(Aloka ssD-280,UGR-23)を使用し血管径とパルスドップラースペクトラムを記録した。ドップラー法による血流量の測定は次の計算式にておこなった。π/4×(血管の直径)2×時間当りの最大平均血流速度、ドップラー法で求めた脾動脈血流量(X)、上腸間膜動脈血流量(X')は電磁流量計にて求めたそれぞれ(Y,Y')と有意の一次相関を示した(Y=0.59×+2.3,Y'=0.62X'+2.4,P<0.001,P<0.001,Y=0.93、Γ=0.93)、以上よりドップラー法にて脾動脈及び上腸間膜動脈を定量的に測定できることが明らかになった。次にこれらの門脈系の流入血流量を正常人,慢性肝炎及び肝硬変患者で測定した。 2.脾動脈血流量は肝硬変患者で正常人及び慢性肝炎患者に比し著明に増加している事が明らかとなった(7.6±2.4VS.3.3±0.7VS.4.1±1.4ml/min/kg体重)。また上腸間膜動脈血流量も肝硬変患者で正常人及び慢性肝炎患者に比し有意に増加している事が明らかとなった(9.6±2.1VS.7.0±1.9VS.6.8±1.5ml/min/kg体重)。これらの事実は肝硬変患者では腸及び脾臓での循環が亢進状態にある事を示唆している。
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