研究概要 |
初代培養肝細胞系における胆汁酸取り込みに関しては、この培養肝細胞を塩酸リドカイン,リファマイシン等で前処理後に重水素標識胆汁酸を投与して、代謝される重水素標識胆汁酸量からその取り込みに与える影響をみると、これらの前処理により約35〜50%の取り込み阻害が認められた。また、同時にアルブミン投与を行なうと添加濃度に依存してその阻害効果が抑制されることから、肝細胞膜上で共有部分を持つアルブミンまたは胆汁酸リセプターに対するこれら薬剤と胆汁酸に競合的な阻害が推察される。一方、培養肝細胞を(1)インスリン単独(2)dexamethasone(dex)共存下で培養すると、後者の方がタウリン抱合型胆汁酸の合成および排出を促進した。また、estradiol-17β-glucuronide(【E_2】-17G)を添加、培養すると、in vivoでのethynylsetradiol誘起の肝内胆汁うっ滞様の胆汁酸動態が認められた。即ち、細胞中のCAMP,【5!'】-Nase活性および培養液中のタウリン抱合型胆汁酸の低下,硫酸抱合型胆汁酸,このうちリトコール酸(LC)およびケノデオキシコール酸(CDC)の著増が認められた。しかし、dex投与によりこれらの値は対照値近くに回復した。従って、【E_2】-17Gによる肝内胆汁うっ滞機構は、細胞内の小胞体およびペルオキシゾーム等に【E_2】-17Gが可逆的に作用する結果、胆汁酸代謝のaltornative pathwayの亢進と共に、choeicacia:CoA ligase,12α-hydroxylase等の活性変化により、前述の肝毒性の強いLC,CDCの著増、タウリン抱合型胆汁酸の減少が生じる。この時、二次的な作用としてCAMP依存性の【Na^+】,【K^±】ATPase活性が低下する結果、【Na^+】依存性の胆汁酸排出の抑制により、肝内胆汁うっ滞が誘起されると推察する。また、dexは【E_2】-17Gのリセプターからの解離を促進すると共に前述の酵素活性を亢進する事が考えられる。 今後、肝細胞膜の胆汁酸取り込みに関与するリセプターの精製、うっ滞機構の膜レベルでの検討が必要である。
|