研究概要 |
アスピリン喘息(AIA)モデルとも言える実験系を提唱した。すなわち、モルモットにロイコトリエン【D_4】(【LTD_4】)吸入時気道内圧上昇は、インドメサシン投与により増強される事は知られているが、前処置としてトロンボキサン【A_2】(TX【A_2】)生合成阻害剤(OKY-046)で拡張性プロスタグランディン(PG)/TX-【A_2】比を最大にした上でインドメサシンを投与した所、LT【D_4】吸入時気道内圧上昇は、I群=OKY-046(100mg/kg.i・P・)単独投与群132±20%から、【II】群OKY+インドメサシン(30mg/Kg)併用群450±48%と著明な増強を認めた。(P<0.01)。この増強効果は5-リポキシゲナーゼ阻害剤であるAA-861(80mg/kg.P.O.)併用の【III】群でも404±30%とほとんど抑制を受けなかった。以上の結果より、外因性LT【D_4】吸入時の刺激により産生されるアラキドン酸は、PG系が主たる代謝経路であり、5-リポキシゲナーゼ系の関与は少ない。気道においては拡張性PGが重要な役割を果しうる事が証明され、AIAの発症機序としても有力である。 臨床的には、AIA患者にスルピリン100mgの静注負荷試験を用いて、Non-AIAとAIA間にPG生合成感受性に差があるか否かを検討した。AIA(μ=4)では血漿のTX【B_2】濃度(Pg/ml,Mean±SE)は前51±4,10分後59±7,30分後63±9,6-ketoPG【F_(12)】は、前129±43,10分後,48±9,30分後72±17と後者にのみ軽度抑制を認めた。NonAIAではTX【B_2】前48±8,10分後52±3,30分後49±5,60分後39±4,6-ketoPG【F_(12)】は前82±7,10分後82±2,30分後98±5,60分後92±9と変動は認めなかった。 以上よりAIAの発症機序として、拡張性PGによる直接的な拡張効果の除去とともに、好塩基球等の膜安定化作用の除去を介して関節的にヒスタミン,LTの産生亢進をきたすものと考えられた。今後血中SRS-A濃度の測定が望まれる。
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