研究概要 |
Emerys(1970)、筆者ら(1980,1981)のこれまでの研究結果より結合織線維成分(コラゲン,エラスチン)が正常な肺胞形成の過程で鍵を握っていることが明らかとなった。本研究では、コラゲンの生合成の過程で特異的に作用するプロリンアナログ(Cis-4-hydroxy proline,semicarbazide)を各々、幼若ラットに反復投与し、肺胞形成に与える影響を生理学的,形態学的な見地から検討した。Cis-hydroxyprolineを投与した群では体重は投与群が対照群を上回っていたが別出肺の容量,圧一量曲線,形態学的所見の上には差がなかった。その理由として肺胞形成期におけるコラゲンの役割はむしろ小さく(相対的にエラスチンの役割が大きい)か、あるいはCis-hydroxyprolineの半減期が短いために有効濃度を維持し得なかった可能性が示唆された。同様にコラゲンに特異的に作用するlathyrogenであるsemicarbagideを幼若ラットに反復投与したがtoxic doseを有効濃度が近接しており有用な実験結果を得ることが出来なかった。但し両実験を通じて栄養状態が肺胞形成に重要な関わりをもっていることは確実となった。また実験群から得られた胸部異常のラットに強い肺胞低形成がみられたため幼若ラットの胸部に全周性にステンレス製バンドを巻きつけ拘束性換気運動モデルを作製した。このラットではductectasisの所見が著明であり総肺胞数は対照群の60%に減少し、肺胞形成に著しい障害がみとめられた。しかし肺胞径には明確な差はみとめられなかった。今後、正常肺胞形成が胸部の機械的伸展刺激でどのように影響されるかの検討が必要と考えられた。
|