研究分担者 |
石井 寿晴 慶応義塾大学, 医学部病理, 講師 (30101893)
福沢 恒利 慶応義塾大学, 医学部内科, 助手 (40146593)
及川 孝光 慶応義塾大学, 医学部内科, 助手 (20129357)
山内 喜夫 慶応義塾大学, 医学部内科, 助手 (20129711)
山本 実 慶応義塾大学, 医学部内科, 助手 (30129720)
|
研究概要 |
剖検例26例より得た胸部大動脈の正常部分の組織内リポ蛋白をアポ蛋白を指標として検討した。1)蛍光抗体法でアポA-【I】,A-【II】,B,C-【II】,C-【III】,Eの存在が確認された。2)組織よりのリポ蛋白の回収には、トリス塩酸緩衝液を用い、氷冷下3分のホモジナイズが適当であった。3)回収した組織液のPAG電気泳動を脂質染色すると、血清VLDL,LDLと同移動度のバンドが存在した。4)組織液をSDS密度勾酸PAG電気泳動しても、血清と同じ種類のアポ蛋白が全種類検出された。5)電顕下でもVLDL,LDLと同じ粒子が認められた。6)回収試験によりアポBを含むリポ蛋白の約2/3は、組織間液に溶けるか、周囲組織にゆるく付着して存在すると考えられた。7)正常動脈組織の水分含量は70%であった。そのすべてが細胞外液であると仮定してアポ蛋白濃度をmg/dlの単位で表わすと、アポBは血清の1/7〜1/10,アポA-【I】,A-【II】は約1/50であった。8)剖検例の生前最後の血清コレステロールと動脈組織内アポB濃度は正の相関を示した。 これらの成積からみると、内皮の配例が保たれ、病変の形成をみない正常動脈組織では、内皮が境界になり、調整された量の血清リポ蛋白が組織に取り込まれ、血清とはLDLで約1/10の勾配をもった濃度のリポ蛋白が組織間隙を流れて、組織の内部環境を形づくっていると考えられる。この内部環境の変化が細胞内への脂質の取り込み量をかえ、ひいては蓄積につながるとみられる。今後、正常動脈組織としては、血圧や血流の影響の少ない肺動脈組織における組織内リポ蛋白の濃度を調べて、上記の結果を再確認すると共に、動脈硬化の病変組織内での変化を解析したい。まず内皮障害がおきただけの状態をみ、つぎに初期病変のfatty streak、ついで進行病変fibrous plaqueにおける組織内リポ蛋白濃度を比較して、泡沫細胞生成との関係、病変の進行との関係を検討したい。
|