研究概要 |
再生不良性貧血(再不貧)の病態を明らかにする目的にて、骨髄造血前駆細胞(BFV-E,CFV-E,CFV-GM),骨髄Fibroblastコロニ-(CFV-F)形成能,Fibroblast monolayerの造血前駆細胞支持能,Fibroblast培養上清(FCM)の造血前駆細胞におよぼす影響,骨髄中のTリンパ球と造血前駆細胞の相互作用につき検討した。 1.骨髄造血前駆細胞は、BFV-E,CFV-E,CFV-GMとも診断時には著減しており、末梢血液所見が寛解に至っても、造血前駆細胞はかなり減少しており、本症における造血幹細胞の障害はかなり長期にわたって持続するものと思われた。 2.骨髄CFV-Fは増加している例が多く、減少例はなかった。CFV-Fが増加している意義については不明であった。 3.骨髄Fibroblast monolayerの造血前駆細胞支持能は、再不貧骨髄由来と正常骨髄由来のmonolayerにおいて差は認めず、培養開始後8週まで浮遊細胞中にCFV-GMを認めた。 4.FCMの造血前駆細胞におよぼす影響については、再不貧および正常骨髄由来のFCMにおいて差を認めず、いずれも分子量50,000以上の分画においてCFV-GMコロニー形成を増強する因子の存在を認めた。 5.Magnetic Microspheresとモノクロナール抗体を用いて、2例において骨髄中Tリンパ球除去前後のCFV-GMコロニー形成能を比較したがいずれもコロニー形成は認めず、再不貧患児骨髄中の造血抑制Tリンパ球を検出することはできなかった。 本研究では、再不貧の成因は末梢血液所見が改善した後にも幹細胞の減少が持続している例が多く、その中の一例で再発を認めたことより造血幹細胞自体の障害が最も大きいと考えられた。
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