研究概要 |
本研究においては、悪性腫瘍組織での【^(67)Ga】の結合酸性ムコ多糖の種類の決定と炎症巣への【^(67)Ga】の集積に関して以下の如き成果を得た。1)既に分離している悪性腫瘍組織での主な【^(67)Ga】結合酸性ムコ多糖(分子量約1万)を4種類のムコポリサッカラーゼ(コンドロイチナーゼABC,ケラタナーゼ,ヘパリチナーゼ,ヘパリナーゼ)で処理した結果、【^(67)Ga】結合酸性ムコ多糖はコンドロイチン硫酸A,B,C,ヘパラン硫酸,ヘパリン,ケラタン硫酸のいずれでもないことが判明し、おそらくケラタンポリ硫酸であろうと推定された。 2)【^(67)Ga】の炎症巣への集積に関しては、テレビン油を皮下に注入して炎症を惹起したラットを用いて実験したところ、テレビン油注入5日〜7日後のものに最も高い炎症集積率を認めた。このラットを用いて全身オートラジオグラフィで調べたところ、【^(67)Ga】は炎症巣の辺縁部に多量に集積し、中心部には殆んど認められなかった。この【^(67)Ga】集積部をマクロおよびミクロオートラジオグラフィで観察したところ、【^(67)Ga】は炎症巣の辺縁部の好中球やマクロファージの浸潤した皮下組織であることが判明したが、好中球もマクロファージも直接【^(67)Ga】の集積に関与していないことが明らかとなった。すなわち、【^(67)Ga】はこの部位の皮下組織で酸性ムコ多糖に結合していることが推定された。一方【^(67)Ga】結合物質について調べたところ、悪性腫瘍や肝臓の場合と全く同様に【^(67)Ga】は主に分子量約1万の酸性ムコ多糖に結合していることが明らかとなった。この酸性ムコ多糖についてムコポリサッカラーゼ処理を行い、この酸性ムコ多糖の種類を調べたところ、悪性腫瘍の場合と同様にケラタンポリ硫酸であろうと推定できた。これらのことから考えて、【^(67)Ga】の生体軟組織での結合物質は病巣、組織の種類を問わず、いずれも同一の酸性ムコ多糖(恐らくケラタンポリ硫酸)であろうと推定できた。
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