研究概要 |
(1)8週齢メス【C_3】Hマウスの胸部を局所的にX線で照射した場合、生存率は11Gy以下では300日以上経過して序々に低下したが、13Gy以上の場合は100日前後で急激に低下し、120日で0となった。11Gy以下と13Gy以上では生存率に著しい差が認められ、死亡の原因が11〜13Gyの間で異なると考えられた。マウスの体重を週2回測定し、生存率と対比すると、死亡するマウスは死亡の1〜2週間前より体重が減少した。また照射群は生存率に低下がなくても、対象群に比べると体重増加が少なく、早期より体重増加の停止がみられ、発育障害がおこっていた。したがって、体重測定は障害の観察の1つの指標となった。 (2)放射線障害に対する防護作用を、WR2721,エラスターゼ,デキサメサゾンを用いて検討した。WR2721は極めて有効に作用し、15Gyの照射でも400日以上生存して、非照射対象群とほぼ同じ生存率を示したが、体重は早期より増加が停止した。エラスターゼは15Gy照射時は防護作用を示さなかったが、13Gyに併用すると生存率の改善を示した。デキサメゾンは13Gyの照射と併用すると、照射前に投与した場合も、照射100日後に投与を開始しても、いずれの場合も生存率は改善した。したがって、デキサメサゾンは臨床応用しても有効と考えられ、その投与開始時期も投与期間について更に検討する必要がある。 (3)肺組織よりSeyerらの方法に従って、pepsin,酢酸処理によりコラーゲンを抽出し、type【I】コラーゲンをSDS-PAGEにより解析した。【α_1】,【α_2】,βの各分画が同定できるため、type【III】の抽出,type【I】と【III】の存在比について、さらに解析中である。 (4)肺癌患者の放射線治療前後に血清と肺洗浄液を採取し、Procollagen type【III】N末端peptide量をラジオイムノアッセイにより定量した。血清中の値は照射により変化を示すことはないが、肺洗浄液中のpepfideは有意に上昇し、肺線維症をおこした7例中4例で上昇していた。しかし、X-P上線維症がなくても、再発などによっても上昇した。
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