研究概要 |
Elマウスの大脳皮質より分離したシナプトソーム形質膜についてin vitroにおける蛋白質合成に及ぼす発作の影響について検討を加えた。蛋白質合成の実験には、[【^(14)C】]-ロイシンを用いて、その取り込みを指標とした。構成蛋白質はSDS-PAGEのゲル電気泳動で分析し、合成された蛋白質についてフルオログラフィーを行った。実験に用いたマウスは、痙攣履歴のあるEl(+)マウスと痙攣履歴のないEl(o)マウスおよび発作非感受性のddyや【C_(57)】BLマウスなどであった。発作間歇期におけるEl(+)マウスのシナプトソーム形質膜での蛋白合成に及ぼす【Na^+】,【K^+】,RNase,chloramphenicol,cycloheximide,puromycin,Ouabainなどの影響を検討したが、El(o)やddyと比較して有意差は認められなかった。El(+)マウスの放り上げ刺激で起る痙攣では、強直期を除いて、形質膜の蛋白合成は発作直前から促進し、発作30分後で発作間歇期まで回復した。形質膜のSDS-PAGEによる分析のパターンでは、15K,44K,54K,67K,120Kの5個のmajor bandsと20〜30個のminor bandsが観察された。発作間歇期のEl(+)マウスにおいて、67K蛋白質がddyやEl(o)より減少していた。El(+)マウスの放り上げ刺激による痙攣発作の直後では、間歇期に比べて120K蛋白質の減少がみられた。シナプトソーム形質膜で合成される蛋白質は、18K,62K,80Kの3種であった。ddy,【C_(57)】BL,El(o)でも同様な蛋白質の存在が確認されたが、62K蛋白質のラベルは発作時に減少し、その後一時増大するが、発作30分後には間歇期と同程度のラベルに達し、形質膜全体の蛋白質合成の変化と類似していた。ポリゾームの糸で合成された蛋白質は、54K,62K,78K,92K,104K,125Kの6種で、El(+)マウスの発作で特に顕著な変化はみられなかった。El(+)マウスの発作では、形質膜の62K,120K蛋白質がけいれん発作と密接な関連があるものと考えられる。
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