研究概要 |
臓器移植を成行させるためには、個体の免疫学的抵抗性を温存しつつ、拒絶反応を抑える羅針盤となるimmuno monitoringが必要であるが、日常臨床に応用できる信頼性の高い方法は末だない。近年発達したflow cytometryと細胞形質に対する単クローン抗体は、一定の機能を持つ免疫細胞のphenotypeの解析を可能としたT helper/T suppressor比が個体の免疫抑制状態をよく反映すると報告された。しかしながら、本研究で考案した時系列解析法で検討すると、単染色法による免疫細胞サブセットの変動と移植患者臨床経過との間に、一定の相関を見出せなかった。つぎに、2種類の単クローン抗体を使う2重染色法により、より精徴な免疫細胞phenotypeの解析を行った。 検索対象は健常人41名、慢性腎不全患者34名、腎移植患者43名である。未梢血小単核球のphenotypeは単クローン抗体Leu4×LeuIL-2receptor,Leu2a×LeuHLA-DR,Leu2a×Leu15,Leu3a×LeuHLA-DR,Leu3a×Leu8,LeuHLA-DR×Leu【M_3】の組合せで解析した。それらの解析で測定できる免疫細胞は活性型全T細胞、活性型T suppressorlkillar,T suppressor,T killer,活性型T helperlinducer,T helper,T suppressor inducer,活性型単球である。 これらの免疫細胞サブセットの末梢血小単核中比率と、移植後期間、拒絶反応、個々の移植後経過、免疫抑制剤投与量、免疫抑制剤の種類との相関を検討したが、すべての組合せで特徴的な強い相関関係は見出せなかった。したがって、現段階では2重染色法による末梢血免疫細胞phenotype分析は、腎移植のimmuno monitoringとして有用であるとは言えない。 本研究の一端として開発した、単クローン抗体と蛍光ラテックスを使った簡便な単球貧食能検査法の腎移植immuno monitoringとしての意義は現在検討中である。
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