研究概要 |
生体の電気特性が組織の構造により異なることを腫瘍の鑑別診断に応用する目的で, 乳腺腫瘍の電気インピーダンスをin vivoで測定し検討した. 研究方法:同軸2極針電極を術中直視下に腫瘍内に刺入し, これと被検者上腹部に置いた平板電極を合わせて, 3電極を構成した. 針電極の外側導体と平板電極間で電圧応答(パルス応答法)を測定し, インピーダンスの大きさ(以下Z)を求めた. 測定には, 自作のインピーダンス測定装置を用い, 測定に必要な制御, データ収集, 信号処置はコンヒピュータにより行った. また, 生体の等価電気回路に基づいた細胞外液抵抗(R_1), 細胞内液抵抗(_2), 細胞膜容量(C)の3成分を測定値を用いた円線図より算出した. さらに, 腫瘍最大割面の病理組織像より間質の占める面積比を計測しR_1, R_2, Cと比較した. 研究対象:徳島大学医学部第2外科で切除術を受けた乳癌31例, 線維腺13例, 乳腺症10例である. 研究結果:1)10KHzでのZは, 乳癌が良性疾患より有意に高値を示した(P<0.01). 2)R_1は, 10KHzのZと近似した値を示し, R_1, R_2の値は, 乳癌で有意に高く(P<0.01), Cの値は, 良性疾患で有意に高かった. (P<0.01). 3)Z, R_1, R_2, Cの各々は, 良性疾患間や乳癌の組織型間では差を認めなかった. 4)腫瘤最大割面における間質の占める割合とR_1, Cの間には有意な相関関係を認めた. (P<0.01). 以上より, 乳癌と良性疾患では, 細胞外液抵抗, 細胞内液抵抗, 細胞膜容量各々に差を認めることがわかった. したがって, これらをパラメーターとして乳腺腫瘍の電気特性を比較することにより, 乳腺腫瘍の診断応用への可能性のあることが, 示唆された.
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