研究概要 |
外科侵襲下におけるANPの病態生理学的役割と臨床応用への可能性を明らかにするため、臨床例でANP(心房性Na利尿ホルモン)を中心とした各種ホルモンの変動を検討し、臨床応用を目的としてNorepinephrin(NE)投与乏尿モデルでANPを投与してその効果をドーパミン(DOP)と比較検討した。 (【I】)外科侵襲下における血中ANP濃度の変動:食道癌手術症例より適時採血を行い、ANP,バゾプレッシン,アルドステロン等を、更にSuan-Gan2カテーテルにより循環動態の各種パラメーターを測定し、各々を比較検討した。食道癌手術症例の血中ANP濃度は術前全例40pg/ml以下であったが、術後1.2.3.4日目にはそれぞれ62±18(M±SD),59±24,50±13,51±15pg/mlと有意に増加した。バゾプレッシン,アルドステロンのピークは各々術後1,2日目に認められ直ちに術前値に復した。即ち、乏尿期には利尿ホルモンと抗利尿ホルモンの上昇が利尿期には利尿ホルモンの高値のみを認めた。なお、ANP濃度とCVP,PWPとの間には相関を認めなかった。 (【II】)外科侵襲下におけるANPの薬理作用-NE投与乏尿モデルに対するANPの効果-高度外科侵襲下においてはカテコールアミンの分泌が亢進し乏尿や末梢循環不全が認められる。そこで、これらの病態下でのANPの効果を検討した。イヌにNE(4γ/kg)投与開始20分後からα-hANP1γ/kg minまたはDOP3γ/lg minを20分間投与した。NE投与により尿量は減少しα-hANP投与により4倍以上の増加が認められたが、DOP群では明らかな変化はみられなかった。NE投与により腎血奬流量(RPF)とGFRは減少しα-hANP投与によりそれぞれ2.5倍に増加したが、DOP投与群では増加の傾向は認められたが、RPF,GFRともに前値まで戻らなかった。NO尿中排泄量とFENaは、α-hANP投与により各々約6倍と5倍にまで増加したが、DOP投与群ではα-hANP投与群に比較し明らかな変化は認められなかった。
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