研究概要 |
1.動物実験 (1)昭和60年度に行った実験を発展させ、盲腸結紮法による腹膜炎ラットを用いて、次の2種類のアミノ酸液を含む高カロリー輸液を行った場合の比較を試みた。A群:分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度45%,Leu:Val:Ile=2:1:1,B群:BCAA濃度21%,Val:Leu:Ileu=2:1:1。輸液は30時間行った(等熱量等窒素量)。輸液開始24時間後にA群には【^(14)C】-Leu5μCiを、B群には【^(14)C】-Val5μCiを投与し、以後6時間、呼気中【^14CO-2】の累積回収率を求めた。輸液終了後に肝と骨格筋を採取し、組織タンパク質中の【^(14)C】放射活性を測定した。その結果、A群とB群における【^(14)C】-アミノ酸投与後6時間の【^CO-2】累積回収率はともに40-44%で、45%BCAA液中の大量のLeuおよびValはエネルギー基質としてよく酸化されることが明らかとなった。また肝,筋組織タンパク質中への【^(14)C】取込率はA群がB群に比べて有意に高値をし、Leuの重要性が判明した。(2)この結果をふまえ、侵襲モデルを重症熱傷に変え、【I】群:45%BCAA液(Leu:Val:Ile=2:1:1)の有効性を、【II】群:標準アミノ酸(21%BCAA,Leu:Val:Ile=1.9:1.1:1)を対照として検討した。熱傷モデルとしてラットの背部に【III】度、30%のscald burnを作成した。受傷後24-48時間に上記のアミノ酸を含む高カロリー輸液を行い、肝ならびに骨格筋における各種代謝指標を測定した。その結果、重症熱傷においても45%BCAA(Leu-rich)液の有用性が示された。 2.臨床研究 侵襲例と非侵襲例に対し、BCAA濃度が21%から36%までの種々のアミノ酸液を用い、とくにタンパク質代謝におよぼすアミノ酸組成の影響を検討した。その結果、侵襲例では高濃度BCAA液が有用であることが示されたが、BCAA相互の比による変化は認められなかった。非侵襲例においてはBCAA濃度による差はみられなかった。
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