研究概要 |
1966〜1984年の19年間に甲状腺全摘-【^(131)I】内部照射療法を受けた27症例(乳頭癌10,濾胞癌17例)を対象とした。血行性転移として肺,骨,それら両者への転移がそれぞれ12,9,6例に認められた。24例については最低2年,最高20年,平均8年経過を追えたが、3例は追跡不能となった。4例が術後それぞれ2,4,10,10年で癌死した。この4例はいずれも40歳以上で、転移巣における【^(131)I】集積像陽性であった。27全症例の中で、【^(131)I】集積像陰性なのは4例のみであった。 癌組織におけるTg,【T_4】及び【T_3】の有無の検索はPAP法にて行った。全例原発巣より標本を作製したが、15例においてはリンパ節から、また1例づつ皮膚と骨転移巣から標本を得ることができた。転移巣における染色結果は原発巣のそれにおおむね一致した。Tg,【T_4】,【T_3】はそれぞれ26,15,10例で陽性であった。Tgに関しては1例を除く全例で陽性であったことになる。一方、【T_4】及び【T_3】に関しては、それらが陽性の全例が良好な【^(131)I】の取り込みを示したが、【T_4】陰性12例のうち4例、【T_3】陰性17例のうち4例では【^(131)I】の取り込みはほとんど見られないという結果が得られた。 免疫組織化学的に【T_4】あるいは【T_3】が証明されれば【^(131)I】の取り込みがあると予測できるが、証明されない場合にはその有無を予測できないことになる。なお、Tg,【T_4】及び【T_3】が癌組織において陽性に染色されるといっても、モザイク状に極めて限られた部分で陽性であったに過ぎない。この傾向は【T_4】及び【T_3】についてより強かった。一般に【^(131)I】内部照射療法の効果には限界がある。この理由の一つは、【^(131)2】集積像は陽性であっても、実際には【^(131)I】を取り込まない部分が癌の大半を占めていることにあることを、上記の事象は示唆している。
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