研究概要 |
抗がん剤の全身投与に際し, 経口投与と静脈内投与では薬剤の門脈系への移行性が異なるので, 当然肝臓への影響が異なることが考えられる. そして抗がん剤の経口投与は上部消化器癌に対しては接触による直接的な抗腫瘍効果も期待される. また直腸内投与された抗がん剤も門脈系に移行するが, 直腸内に病巣が存在する場合には接触による効果が期待できる. 本研究では胃癌患者を対象としてフッ化ピタミジン系制がん剤の投与ルートによる抗腫瘍効果と肝障害の程度を比較検討した. 術前に5-FU1.3〜3.1gの経口あるいは2.5〜4.5gの静脈内投与を行った胃癌患者は, 末梢血および肝機能などに異常値を指摘しえなかったが, 肝生検を行うと脂肪沈着, 巣状肝細胞壊死, 好酸体, 空胞核, および細胞質淡染などの所見が散見された. これらの所見は経口投与群に著明であった. 肝組織の電子顕微鏡所見は脂肪滴, ミトコンドリアの腫大, 封入体, SER・RERの開大, およびライソゾームなどが認められた. Tegafur(FT)7.8〜15.0gおよびUFT7.2〜13.2g(FT換算)の経口投与についても5-FUと同様の所見が認められた. 術前胃癌患者にFT600mgを経口, 800mgを静脈内, そして750mgを直腸内に投与し, FTと5-FUの血中濃度を測定すると, 経口と静脈内投与では投与後60分以内に, 直腸内投与では180分後に最高血を示した. これらの薬剤を数日間投与しておき, 手術時に採取した材料につき5-FUの組織内濃度を測定したところ, 血中濃度より高値でとくに肝が高く0.143〜0.431μg/g, ついで胃癌の0.033〜0.116μg/g, 胃粘膜0.021〜0.083μg/gの順であった. 担がんマウスにつきCarmofurの癌細胞内局在がアクチノマイシンDによりどのような影響を受けるかをオートラジオグラフィーにより検討した. またブレオマイシンの副作用が組換え型スーパーオキシド・デスムターゼにより軽減される現象を発見した.
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