研究概要 |
1.臨床的研究:大腸癌70例の生検および手術材料から採取した癌組織の細胞核DNA量の測定を行い、臨床病理学的所見および予後との関係をみた。(1)占拠部位,大きさ,組織型,深達度,stageとはDNAヒストグラムの差がなかった。(2)リンパ管侵襲,リンパ節転移陽性のものは陰性のものに比べ、DNA量の高い【III】型が多い傾向がみられた。(3)静脈侵襲,肝転移陽性のものは陰性のものに比べ、有意に【III】型が【I】型よりも多かった。(4)5年以上生存例では【I】型が有意に多く、5年未満死亡例では【III】型が多く、【I】型と【III】型との間に有意差を認めた。【I】型を示す症例での5年生存率83.2%に対して、【III】型を示す症例では26.7%の5年生存率しか得られていない。(5)リンパ節転移陰性での死亡例は全て【III】型で、【I】型は全て生存例であった。リンパ節転移陽性の【I】型の5年未満死亡率は30%、【III】型では66.6%と【III】型での高死亡率を認めた。(6)ssまたは【a_1】以下での【I】型の死亡は15例中1例のみであったが、【III】型ではいずれの深達度においても死亡例が多かった。(7)stage【I】および【II】の死亡例は全て【III】型であった。【I】型では進行度が進むにつれて5年生存率の低下がみられたが、【III】型では進行度と5年生存率の相関がみられなかった。 以上の結果より大腸癌の進行度を示す臨床病理学的諸因子とともに、大腸癌細胞自体の生物学的特性も予後に関与していることが示唆された。 2.実験的研究、実験大腸癌において核DNA量の差が、その後の癌発育にどのような変化をもたらすかを知るために、ドンリユウラットにDMH投与による実験大腸癌作製を行った。(1)注射終了後22週を越えると2/3以上のラットに病変が認められ、26〜30週では全てに病変を認めた。(2)病変の形態は6型に分類され、この肉眼形態と組織像および細胞核DNA量との間の相関を検討中である。
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