研究概要 |
クリアリング法によりリンパ節転移を検索し, 病理組織学的所見とくにリンパ管侵襲, リンパ球浸潤との関係を比較検討した. 1.大腸癌のリンパ節転移率は57.5%(結腸癌;56.7%, 直腸癌;59.0%)と高率であった. 2.組織型では低分化な癌ほど転移率は高率で, とくに粘液癌で高く, 予後不良の重要な因子であると考えられた. 3.壁深達度が深くなるに従ってリンパ節転移率は高率となり, とくにs.a_2以上では著明であった. 4.リンパ管侵襲(ly)の程度とリンパ節転移率は相関し, lyの程度が高くなるほどリンパ節転移率は高くなった. また, lyの深達部位がsmからss.sと深くなるほどリンパ節転移率は高率になった. そこでlyの程度とlyの深達部位を組み合わせることによりリンパ節転移の高危険群を明確にすることができた. 5.癌間質および癌先進部のリンパ球浸潤(lymphoid infiltration, LI)が高度な症例は転移率が低く, 軽度な症例は転移率が高かった. このことはリンパ球浸潤が生体の防御反応として働くことが推測された. 6.この浸潤リンパ球についてNK, Kcellのモノクロナール抗体であるLeu7を用いて免疫組織学的研究を行った. Leu7陽性細胞と浸潤リンパ球の程度は相関し, Leu陽性細胞が増加するほどリンパ節転移率は低くなり, 浸潤リンパ球の免疫反応への関与が示唆された.
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