研究概要 |
1.左冠動脈主幹部閉塞犬における逆行性Cardioplegia法:軽度低体温体外循環下で90分間の大動脈遮断を行い、この間左冠動脈主幹部を絹糸にて完全閉塞して虚血心とし、4℃St Thomas Hospital液による逆行性Cardioplegia群と同液を大動脈基部に注入する順行性群とを比較検討した。心筋温は左室心筋温の低下が順行性群で明らかに不良であり、左室心筋P【co_2】,P【o_2】,pHについても順行性群で有意に不良であった。心筋乳酸摂取率に関しては血流再開直後値が逆行性群で有意に高かった。心筋内ATPは両群とも虚血により低下したが、大動脈遮断解除後は逆行性群での回復がより著明であった。 2.逆行性Cardioplegia法における右心室の保護効果の検討:犬を用い、軽度低体温体外循環下に60分の大動脈遮断を行い、4℃St Thomas Hospital液による順行性群,逆行性群,逆行性+局所冷却群について大動脈遮断解除後10分間の補助循環ののち体外循環より離脱し、その後経時的に心拍出量,右房圧,右心室圧(EDP,dp/dt),右心室長軸収縮率を測定して右室機能の評価判定を試みた。その結果、順行性群では虚血前後で右心機能に有意差は認めなかったが、逆行性群では虚血後15分時の右房圧が有意に上昇、右心長軸収縮率も有意に低下し、右心保護上問題のあることを示した。なお、逆行性+局所冷却群では虚血前後で有意差を認めなかった。 3.Langendorff灌流法による心停止時間の安全限界に関する検討:ラット摘出心をKHB液を用いてLangendorff法により灌流を行い、Working modeとして15分間前負荷18mmHg,後負荷80mmHgで各種心機能を測定後、4℃StThomas Hospital液による落差灌流で心停止を得.60,120,180分の虚血後すみやかにLangendorff法を再開して15分間灌流を行った。ついで同じ前後負荷でWorking modeに切り換え30分間灌流し、5分毎に各種心機能を測定してその回復率を検討した。
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