研究概要 |
本研究で従来から言われている様に, 虚血後に脳が不可逆的変化へ移行するには時間の因子が重要であることが確認された. 同時に脳が未だ可逆的かどうかの判断は血流測定のみでは不可能で, 虚血の程度と持続時間を知る事が重要である. Somatosensory Evoked Potentialは血流と同様に時間的経過がとらえられないと, それのみでは判断が難しい. ただ昇圧, Hydercapnia等の虚血部の循環改善を図ってその変化より判断する事は可能性として残っている. グルコース代謝については, 対側の78±16%つまり最低62%以上保たれているなら機能的, 形態学的に可逆的であることを示した. 逆に34%グルコース代論が残存していても, 脳の機能は勿論形態維持にも不十分であることが認められた. pHに関しては, 1時間虚血群より2時間虚血群において虚血巣がより酸性化している傾向は見られたがデータが少なく有意性についてはもう少し検討を要する. 血管透過性は2時間虚血群でも再開通後, 出血性硬塞及び浮腫の増悪は見られず, この程度の虚血が2時間持続しても血管内皮は保たれることが示された. 次に高血糖負荷, 静脈環流障害において検討した. これらはいずれも虚血性脳損傷の程度を増悪させることが認められた. このことは虚血性脳血管障害の治療において, これらの増悪因子を取除くことでその障害を軽減することが出来る可能性を示唆している. これらの実験はいずれもラット中大脳動脈閉塞再開通モデルを用いて, オートラディオグラフィー法により行なわれた.
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