研究概要 |
悪性脳腫瘍では病期の進行に伴って, リンパ球幼若化反応の低下, Tcell数の減少, PPD試験陰性率の増加など, 細胞性免疫機能が低下することが知られており, その病態の1つに血清抑制因子の存在が注目されている. 最近, 免疫抑制酸性蛋白(Inmmunosuppressive aidic protein:IAP)が担癌宿主で癌の進展に伴って血清中に増加し, invivoおよびinvitroでの免疫応答を著しく抑制することが報告されたのを機会に, 脳腫瘍患者において血清IAPを測定し, 免疫抑制因子としての意義や脳腫瘍の悪性度, 診断, 病態の推移および治療効果を判定するためのパラメータとしての意義を検討するのが第1の研究目的であった. 結果として(1)グリオーマおよび転移性脳腫瘍の血清IAP値は正常対照群や非グリオーマ群より有意に高く, (2)組織学的悪性度が高いほどIAPは増加し, (3)治療効果を反映して減少する傾向があった. (4)血清IAP値と末梢血リンパ球幼若化反応は負の相関があったが, 免疫グロブリン値とは相関せず, (5)perforanance statusとIAP値との間には相関があった. また(6)IAPは血沈との間に相関はあったが, CRPとの間に明らかな相関はなかった. (7)OKT4(holper)/OKT8(suppressor)比はIAP高値群で低下の傾向を示した. 以上から, IAPは脳腫瘍の悪性度を比較的よく反映し, 診断や治療効果の判定, 術後の経過観察の際のパラメータとして有用であり, また脳腫瘍の細胞性免疫能を抑制する血清因子の1つであると考えられた. 第2の研究目的は宿主免疫反応の局所的発現と考えられる脳腫瘍組織内リンパ球浸潤の解析であるが, グリオーマ, 転移性脳腫瘍ともに浸潤リンパ球の主体はTccllであり, そのsubstの解析では一定の傾向は認められなかった. 一部の症例でリンパ球浸潤の程度が血清IAP値や末梢血リンパ球幼若化反応と負の相関を示し, 宿主の細胞性免疫の局所的発現としてこの腫瘍内リンパ球浸潤の現象を理解してよいことが示唆された.
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