研究概要 |
脳腫瘍患者のリンパ球にin vitroで抗腫瘍能を与え、再び患者の腫瘍内に移入することにより抗腫瘍効果が期待でき得るか否かを検討し、以下の結果を得た。悪性glioma患者リンパ球をrIL-2存在下で培養すると、natural killer活性は約35%,5種類のallogeneicなglioma細胞に対し20%前後,自己glioma細胞に対し15%位の、各々、killer活性の上昇が得られた。脳腫瘍内侵潤リンパ球を用いた同様の実験でも、natural killer活性は10〜15%,autoおよびalloのglioma細胞に対しても10%前後のkiller活性の増強が得られた。以上、悪性glioma患者リンパ球からも広い活性を示すLAK細胞の誘導が可能と判り、12例の悪性glioma患者に、LAK細胞とIL-2の局所注入療法を試みた。4例で腫瘍縮少効果,7例で臨床症状の改善を認めた。次に、Fisherラットに同系glioma細胞T9を脳内移植して作製した脳腫瘍モデルを用い、同様の検討を行ったところ、in vitroでのT9に対する殺細胞効果は30〜50%上昇し、脳腫瘍モデルに投与した場合、平均生存期間は、対照群の19.6日に比べ、局所投与群で23.3日,全身投与群で24.6日となり、生存期間の延長傾向を認めた。さらに、オートラジオグラフィーでの検討では、LAK細胞を全身投与しても、脳腫瘍内への到達は軽微であるが、局所投与では7mm近くも腫瘍内へ浸潤することが判明した。一方、治療無効群では、血清中にIL-2inhibitorの上昇を認め、その抑制活性は分子量約5万付近に活性のピークを認めた。さらに、悪性glioma患者のHLA抗原の検討では、HLA-B抗原のうち、BW61またはBW62のいずれかを有する者は、全患者の45.7%に認めた。HLA-DR抗原の検討ではDRW61は患者群の表現頻度0であり、対照群の0.75に比べ有意な低下を認めた。他のHLA抗原に関しては特別な傾向はみられなかった。今後、宿主の免疫抑制機構の排除等の工夫により、より有効なimmune transferの検討を進める予定である。
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