研究概要 |
1:家兎腓骨神経を用いて, 遊離神経移植(F群), 血管柄付神経移植(V群), 変性神経移植(D群)に関する実験を行い, 組織学的, 免疫組織化学的および電気生理学的観察を行った. 2:移植後1週では, 全群n軸索の変性が認められた. F, V群ではNF,S-100の変化に比べMBPの変化は少なく正常に近かった. 3:移植後2週目ではF, D群においてはV群に比し移植神経片周囲の瘢痕が著明であった. この時期ではMBPにも変化が生じていた. 中枢縫合部ではV,F群の全例, D群の一部に再生軸索の通過が確認された. 4:移植後3週目になると, V群の清掃はF群に比し進行していた. しかし, 両群間において再生軸索の程度には明らかな差異は認められなかった. 5:移植後6週では, V群においてはNF陽性像が横断面全域にみられたが, F群とD群では主として辺縁にみられた. 末梢部ではNF, S-100とも移植部に比し減少しており, 得られた陽性像はV群, F群, D群の順に多かった. 6:移植後12週になるとV群では他群に比し移植部のNF,MBP, S-100陽性像は顕著であり, また末梢部においても横断面全域に多数みられた. 7:腓腹筋を被検筋とした運動神経伝導速度はV群27.6±4.0m/sec,F群18.0±1.5m/sec,長期変性群では測定不可能であった. 8:以上より移植された神経がよりすみやかにその機能を回復する上で, 血液の温存が重要であり, さらに長期間脱神経におちいった神経片の移植はきわめて不利であり, 臨床上利用価値の少ないものと考えられる.
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