研究概要 |
1.光刺激に対する網膜活動電位の麻酔深度モニターとしての応用(1)各種麻酔・手術器具が患者近くに集中する手術室内で、網膜電図(ERG)を用意に導出するためには、キセノン光源を患者の眼前に設置するのは困難である。それで、数メートル離れたERG測定システム(光刺激装置本体を含む)と光学ファイバーにより接続したコンタクトレンズ型ERG電極を作成した。(2)無麻酔下の健常成人6名を対象として調べた結果、このERG電極の1分間隔で1時間の使用により、キセノン光源(2Joule,眼前より距離20cm)を使用して得たERGとほぼ同等のERG波形を導出でき、その再現性もよかった。角膜損傷,網膜障害,自覚症状の異常などは発生しなかった。(3)導出したERG波形のa波振幅,律動様小波頂点潜時を短時間の間に解析処理するプログラムを作成し、麻酔深度の変化や脳虚血を迅速に診断できるようにした。(4)臨床治験に合意した患者を用いて、実際の臨床の場でそのシステムの性能を評価した結果、電気メスなどの電気的干渉に対する雑音・ハム対策の必要を認め、プリアンプのフィルター回路,入力インピーダンスなどに改良を加えた。改良したシステムにより現在は臨床データ<1>麻酔深度による影響<2>体温変化による影響<3>脳死患者のERGを採取中である。 2.カエル眼杯ERGによる麻酔作用機序の解明揮発性麻酔薬によるERG変化は、中枢神経内での抑制系神経伝達物質GABA,グリシンによる変化と類似していた。然るに、GABAやグリシンによる変化は、その拮抗物質によりリバースできるのに、同様の拮抗物質を揮発性麻酔薬と同時に投与してもリバース出来なかった。揮発性麻酔薬による変化は、より非特異的なものと想像した。
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