研究概要 |
吸入全身麻酔症例におけるPa【o_2】の推移を上腹部手術症例10例を対象として観察した。その際同時に肺における換気・血流比(【V_A】/Q)分布もどのような推移を示すかについても6種不活性ガス排泄法を用いて観察した。これらの測定は麻酔導入後1.5時間毎に行った。 その結果上復部手術中においては、Pa【o_2】は漸時上昇傾向を示し、【V_A】/Q分布においてはシャント率の減少、low【V_A】/Qの減少傾向をともなった。 この原因としては、1.心拍出量が手術の経過とともに減少傾向を示し、その結果肺血流量が主として、low【V_A】/Q部分から減少し、その結果Pa【o_2】が上昇したこと、2.麻酔導入に使用したサイオペンタールが副交感神経を刺激し、またサイオペンタールやサクシニルコリンがヒスタミンを遊離し、気管枝収縮を起し、シャントならびにlow【V_A】/Qを形成し、この作用が時間とともに減弱しPa【o_2】が上昇したこと、3.上腹部手術における初期の操作が胸部あるいは横隔膜を圧迫し、FRCを低下させシャント、low【V_A】/Qを形成するが、手術の後半においてはかかる圧迫が解除されたためシャント、low【V_A】/Qが減少し、したがってPa【o_2】が上昇したことなどが考えられた。今後これら各々の原因がどの程度Pa【o_2】の上昇に関与するかにつき研究を続ける予定である。 なお交付された補助金は6種不活性ガスのガス代,ガスクロ運転のためのガス代(純窒素,水素,純空気)、ガスクロ電極の洗滌代に充てられた。
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