研究概要 |
真菌性尿路感染症は難治性尿路感染症に対する科学療法後の菌交代として発現するが, なかでも担癌患者や癌摘出術後の癌化学療法例に多発している. このことは, 免疫能の低下が発生の原因となり得ることを示唆する成績である. 更に, 尿路腔内へのカテーテルの留置例においても協力な抗菌化学療法後にしばしば発症することから, 局所的な免疫能の低下もその発症に関する可能性が示された. 分離菌数は10^4CFU/ml以上の生菌数で検出されることが多いが, 膿尿が陰性であるにもかかわらず, 尿路に定着している真菌も認められている. こり現象は, 真菌尿の臨床的評価が最近尿の診断基準とは同一の手段を流用することができないことを示したものというよう. そこで, 真菌が尿中で増殖しているか否かを判断する手段としてその代謝産物である, D-arabinitolの定量的解析をGLCを用いて測定した. その結果, D-arabinitolはCandida属の増殖時には培地中で一過性に増加する物質であるが, 最近ではむしろ消費されることを示す成績が得られた. しかしながら, 同様の検討を臨床例について施行したところ, 正常者の尿中 D-arabinitolの生理的変動が大きく, 真菌尿のD-arabinitolの変動がこの中に埋没してしまうことが判明した. それ故, この方法のみに依ったのでは, Candida属の簡易同定の手段としてはその有用性は期待できるが, 尿中のCandida属の評価の手段としての価値はないものと考えざるをえない. そこで, 測定物質を脂肪酸などにも拡大して, 継続して研究を遂行している.
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