研究概要 |
泌尿器科において、膀胱癌は頻度の高い癌で、その組織型,病型も多様性があり、この膀胱癌に対しマウス抗ヒトモノクローナル抗体を用い、その抗原の特異性,分布状態を検討することは重要であると思われ、今回、東北大学薬学部衛生化学教室で作成された抗体を使用し、手術材料であるヒト膀胱癌に対しその特異性をimmunoperoxidase法により検討した。 検討したモノクローナル抗体は、KU1株からHBA4,HBE3,HBG9,HBH8の4種類,T24株からHBJ8,HBJ9,HBJ67,HBJ71,HBJ104,HBJ112,HBJ127の7種類,5637株からUB22,UB90,UB114,UL27,UL30,UL96,UR17,UY12,UY55の9種類である。 1)KU1シリーズでは36.6%〜57.6%の陽性率を示したがT24シリーズと5637シリーズでは、それぞれ0%〜64.0%,0%〜66.6%と各モノクローナル抗体間の陽性率に差を認めた。T24シリーズでのHBJ9は66.0%,5637シリーズのUR17は66.6%,UY55は55.3%と高い陽性率を示したのに対しHBJ67,UL30は陽性例を認めなかった。 2)赤血球と反応をしたものがKU1シリーズのHBE3に30例中2例,T-24シリーズのHBJ9に50例中2例,5637シリーズのUR17に30例中4例みられたがいずれもABO血液抗体とは異なるものであった。 3)正常膀胱粘膜との反応がHBH8に、腫瘍と正常粘膜が同時に観察可能であった8例中5例にみられた。 以上のごとく、検討したモノクローナル抗体のうち、いくつかには膀胱癌に特異的と思われる抗体が認められ、膀胱腫瘍の診断等に対する有効性が示唆された。
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