研究概要 |
本研究は絨毛癌の発生に関与する癌遺伝子の同定を目的とした. このため5種類の絨毛癌細胞からONAを抽出し, transfection実験を行った. 受容細胞としてNIH3T3細胞及び4CY-4-3細胞(ヒト活性型C-H-ras遺伝子により完全形質変換をおこすアデノウィルス4型誘発ラット不完全トランスホーム細胞)を用いた. その結果3種類についてフォーカスの形成を認めたが, 二次transfection後Alu配列を失い癌遺伝子の同定にはいたらなかった. このため既知の癌遺伝子プロニブを用い, Southern及びNorthern blottingを行ったが, 絨毛癌細胞では11〜13種類に及ぶ癌遺伝子表現の増大が認められ, 絨毛細胞におけるゲノム不安定が絨毛癌化の一因となりうるのではないかという推測をえた. 1精子受精・雄性発生奇胎培養細胞で観察される高いSCEの発生及び染色体構造異常もこの推測を支持した. さらに染色体構造異常の切断点を調べたところ, 絨毛癌細胞で表現の増大していたN-myc癌遺伝子座等に好発することが判明し, 受精形態の異常により導かれる奇胎細胞のゲノム不安定と絨毛発癌の因果関係が示唆された. 細胞融合法(マウスNIH3T3細胞書ける絨毛癌細胞)を行うため, 8-Aza-guanine抵抗性細胞株を作成することを試みたが不成功に終わったため, Neo遺伝子導入細胞株を先ず作成した. これを選択マーカーとして現在細胞融合を施行中である. 絨毛不死化細胞株を作成し, 絨毛癌化のIn vitroモデルとするために, 正常胎盤絨毛細胞へアデノウィルスEla遺伝子を導入した. その結果非形質転換細胞の限界を越えて, 細胞増殖が継続中であるため, 次にN-myc, Vsis等の既知の癌遺伝子トランスフェクションを考慮中である.
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