研究概要 |
胎児の呼吸様運動(fetal breathing movements:FBM)の頻度やそのパターンは胎児の成熟とともに変化することが知られている. そこで我々はFBMのパターン変化と胎児の中枢神経形の成熟との関係, そしてFBMのパターン分析による胎児肺の機能的成熟ど評価法について検討した. その結果, FBMパターンの一つのparameterである連続する呼吸(無呼吸時間3秒以上)の1つのepisodeが10秒未満の頻度は妊娠25から32週にかけて有意に減少し, 逆に30秒以上の頻度は有意に増加した. また, 30秒衣装のFBMの頻度と単位時間あたりのacceleration数, 総acceleration数/総胎動数比そしてlong term variability値との間にも強い正の相関が存在した. このことはFBMの持続時間は胎児の成熟につれ延長し, 胎児の中枢神経系の機能的発達と関連すること, またFBMの持続時間は胎児の呼吸パターンの成熟化を表わす一つのパラメータとなりえ, これにより胎児肺の機能的発達度を知りえる可能性を示唆していた. 以上の基礎的研究成果を参考にFBMの持続時間, 深さそしてその規則性によりFBMのタイプをimmature, transitinal, matureの三つに分類し, 早産に至った72例の妊婦を対象に生後の呼吸障害の発生頻度を調査した. その結果, immatureでは68.2%(RDS, 無呼吸発作各々6例)に呼吸障害の発生をみたが, matureでは12.5%にすぎず, 重症の呼吸障害の発生は1例も認められなかった. さらにFBMのパターンの成熟化につれ羊水中の肺表面活性物質(飽和レシチン)の有意な増加も認められ, 羊水飽和レシチンが1.0mg/dl(RDSのcritical level)を越える頻度はimmature, mature typeで各々27.3, 80.0%であった. 以上の結果はFBMの持続時間が胎児の中枢神経系ま発達と密に関連すると共にFBMのパターン分析により胎児肺の神経学的発達や肺表面活性物質からみた生化学的発達を含む胎児肺の機能的発達度の出生前評価の可能性を示唆している.
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