研究概要 |
子宮内膜症は, 生殖年齢層婦人に好発し, 今日不妊症の原因疾患として最も注目を集めているものの一つである. 本症は最近増加傾向にあり, 新来患者の3%, 入院婦人科手術患者の20%に達しようとしている. かように, 不妊症との関連においても本症の発生病理の解明は必須で産婦人科の急務であろう. 初年度(昭和60年)は, 自ら開発したエストロゲン, レセプタの形態学的検出法を用いて, 内性子宮内膜症(子宮腺筋症)12症例の検討を行った. その結果, 異所性の増殖期内膜5例および, 増殖期様を呈する異所内膜腺管上皮12例中4例において, 染色性の強弱はあれ, 陽性所見を得た. 先の電子顕微鏡学的検討から明らかにされた本症の類腫瘍性増殖の可能性とともに, 子宮内膜症にエストログンが多分に関与している事が示され, 今後の子宮内膜症の臨床や発生病理の解明に示唆を与える可能性がある. 次年度(昭和61年)は, 主としては化学的に子宮内膜症(とくに子宮腺筋症)におけるコラーゲン成分の分析を行った. 子宮腺筋症, 子宮筋腫の各10症例のコラーゲン成分の分析の結果, 両者は, 総コラーゲン量としては差異を認めないが, 相対的に腺筋症においてIII型コラーゲンの割合が少ない事が判明した. この事は腺筋症腺管の細胞間間質への侵入と対応していると考えられ, 子宮内膜症の発生病理に多くの示唆を与えるものと思われた. 最終年度(昭和62年)は, これらの結果をもとに, 血清CA125値に着目し, 本症の診断的価値並びに不妊症との関連から, 子宮内膜症の保存療法の確立を図った. ホルモン療法と保存的手術療法を主体とする保存療法により, 子宮内膜症が原因疾患とみなされる不妊症患者で, 33症例に46妊娠を得る事に成功した. 子宮内膜症管理例33症例46妊娠の予後は, 切迫流産27%, 自然流産20%, 切迫早産27%, 早期産14%, 正期産66%, 帝王切開36%であった.
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