研究概要 |
卵巣癌に対するMoring Strip法を中心とした放射線療法における治療法の改善と副作用の軽減を目的として研究を行なった. 臨床データーは, 放射線療法主体群43例, 再発時化学療法施工群7例, 化学療法併用群14例の計64例から得た. 放射線療法主体群の5生率30.2%であるのに対し, 再発時化学療法群7例の5生率が14.3%と悪いため, 初回治療時に化学療法を併用した化学療法併用群では50.5%と優れた治療成績を挙げることができた. その内訳を3生率でみると放射線療法主体群ではI期(15例)-66.7%, II期(11例)-54.6%, III期(13例)-15.4%, IV期(4例)-0%. 漿液性(28例)-42.9%, ムチン性(6例)-16.7%, 類内膜性(5例)-80.0%, その他(4例)-25.0%であるのに対し, 化学療法併用群ではI期(2例)-100%, II期(6例)-83.3%, III期(6例)-50.0%, 漿液性(4例)-75.3%, ムチン性(4例)-50.0%, 類内膜性(6例)-83.3%であった. 臨床上の問題としては, 肝・腎・消化管等実質臓器障害, 特に消化管の晩期障害としてのイレウス様症状で11例(17.2%)にみられたことである. この原因解明等を含め, ウィスター系メスラットを用いた実験では, (1)全腹部照射のLD50線量は10Gyであった. (2)同一線量を照射した場合には分割照射の方が, 全腹部照射より腸管上皮の再生・回復が早いことが判明した. (3)LD50の照射ではイレウスの発生は認められず, 開腹後照射群に於て消化管障害の程度が強いことから人体でのイレウス発生は術後癒着が大きく関与していると考えられた. (4). LD50の照射では肝腎臓の障害は人体例と同様に観察されなかった. 以上を踏まえた臨床応用では全骨盤照射を30Gyから20Gyへと減じた化学療法併用群においてはイレウス様症状を認めなかった. 結果としては, 化学療法併用群ではMoring Strip法16Gy1seg(39TDF)+全骨盤照射20Gyが基本照射量と判明したが, 抗癌効果を考えるとMoring Stripは少くとも50TDF位までは増加を図る必要があると考えられた.
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