研究概要 |
手術摘出材料より採取したヒト子宮頸部扁平上皮組織, 扁平上皮化生, 異形成, 上皮内癌, 浸潤癌の各種組織について, 形態学的に分化を検索すると同時に, 各種レクチンを用いた免疫組織化学的手法により, 結合糖鎖構造の変化を検討した. DBA, PNA, SBA, MPA, RCA-1, GS-1などガラクトースまたはNPセチルガラクトサミンに結合するレクチンは正常扁平上皮の介化と共に親和性を増し, 陽性所見を示した. 異形成, 癌などにおいてはこれらの性格が失われ, 分化異常を反映しているものと考えられた. 一部の高分化型扁平上皮癌では, 癌巣の中心部において陽性所見が得られ これらの結合糖鎖はケラチン蛋白と密接な関連を有していることが示唆された. また, SKGIII細胞を用いての培養細胞による実験でも, 細胞増殖が進みパール様重層化した部分にOBA陽性であった所見も, 上記の所見と一致するものであった. NPセチリガラクトサミン結合レクチンは正常の頸管腺上皮には陰性であるが, 頸部腺癌では強陽性を示した. すなわち, 癌化にともなって表面糖鎖構造の変化が明らかに示された. この陽性所見は, 同じ腺癌であっても子宮体部腺癌には認められず, 頸部腺癌と体部腺癌の鑑別に応用できることが判明した. このようにレクチン結合性の変化が糖液産生性上皮に顕著に現れることから, 卵巣の粘液腺癌に試みたところ, 強陽性を示した. 卵巣の漿液腺腺癌では陰性であるから, 両者の鑑別に極めて有用である. 培養細胞による研究においてDBA, PNAは核分裂細胞に強陽性にみられた. 細胞増殖回転の途上において是面糖鎖の変化があることが示され, 今後の研究を待つこととなった. なお, フコース, マンノース, Nアセチルグルコサミン結合レクチンは, いずれも陰性であった.
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