研究概要 |
Semialograftである胎児が母体の中で分娩まで生存し得る機序を検討すべく、胎盤付着部位近傍の免疫環境につき検討を加えた。 まず実際母体が胎児を認識しているか、子宮近傍リンパ節(【LN_2】)を用いて検討した。その結果、妊婦LN,mononuslear cells(MNC)のmitogin反応性は非妊LN,MNC,に比し顕著に上昇を示した。又臍帯血MNCに対する反応も、末梢血に比し上昇を示した。更にNK活性を検討したところ、非妊LN,MNC,に比し高値を示した。以上より、母体は胎児を認識し、それに対し傷害的に働くものと推察された。そこで胎児を守る機序の存在の必要性が重要と考えられ、次に胎児と母体の接点に存在する脱落膜の細胞性免疫能(CMI)におよぼす影響につき検討した。脱落膜細胞(Decidual cell,DC)は正常妊娠の初期中絶により得られた脱落膜組織をcollagenaseおよびDNA se処理し、遊離細胞を得、それを更にpercoll比重遠心法により分離し、比重分画1.035〜1.045を採取しDCとした。まずDCおよびDCの培養上清のCMIにおよぼす影響をmitegen反応系,およびMLR系で検討した。DCの培養上清は無血清培養液中で24時間培養し得た。又DCの培養時Indemethacin(Ind)を添加する系を作製した。更にDC培養上清中のprostaglandin E(PGE)濃度も測定した。その結果、DCおよびその上清はCMIを低下させ、上清中の抑制因子の一つとしてPGEが推察された。又培養上清がSuppressor cell機能を誘導することも明らかとなった。更に脱落膜海綿層に存在するMNCを免疫組織学的に同定するとSuppressor T cellであり、機能的にも、CMIを抑制することが明らかとなった。 以上より、母体は胎児をSemialograftと認識しているにもかかわらず、それが守られる機序として脱落膜由来の免疫抑制機構が大きく働いていることが明らかとなった。
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