研究概要 |
胞状奇胎が、毛癌の発生に関与していることは周知の事実である。癌化の二段階過程の理論から考えると奇胎毛細胞は正常毛細胞と毛癌細胞の中間に位し、dormant cell(潜在的癌細胞)たりうる可能性がある。そこで発癌プロモーターは奇胎培養細胞を悪性転換(癌化)させうるかどうかを二重軟寒天のコロニー形成能と異種動物移植形成能を指標に検討した。 方法:現在、我々が樹立した胞状奇胞由来培養細胞、BM-26,BM-34を発癌プロモーターの代表であるTPA(12-0-tetradecanoyl phorbol-13-acetate)(0.1,1.0,10,100ng/ml)加培養液中で2,4,6,8週間培養した。その各処理細胞をHamburgerの方法で二重軟寒天中で培養し、2週後のコロニー形成能(plating efficiency)を算定し処理、末処理群間の有意差を求め、TPAによる悪性転換の有無を調べた。同時にこれらの各処理細胞の形態学的変化とヌードマウスに移植して腫瘍形成能とを観察した。更に少量のイニシエーター(McA)とTPAとの組合わせによる同様な実験系がおこなわれた。成績と結論:TPA処理奇胎培養細胞は核小体と脂肪の異常増加という形態変化が認められたが8週間処理までの細胞では腫瘍形成能は観察出来なかった。二重軟寒天中でのコロニー形成能の観察では、TPAの8週処理群にて、はじめて、対照に比して、その濃度に比例してコロニー数の増加を認めるも有意差はみられなかった。又、MCA-TPA処理(MCAの72時間処理、TPAの10ng/ml)では4週処理群で対照に比して有意にコロニー数の増加がみられた。今後はTPA群では10週以上、McA-TPA群では6週以上の処理をすることによりTPAがプロモーターとして奇胎細胞を癌化させうることが判明すると考える。更に、他のプロモーターとしてTele ocidinについても検討中である。尚、今回は一世代の細胞にTPAを処理したが次は細胞継代をしながらのTPA実験系を予定している。
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