研究概要 |
昭和55年2月より62年4月まで, 2029例の不妊患者に延べ3088回の精子受精能力検査(ZSPT)を行った. 治療後も含め2回以上の検査を行った症例では最もよいものを成績とした. 2029例の平均ZSPTは, 68.3%で, 精液検査正常(1121), 乏精子症(491), 精子無力症(417)のZSPTはそれぞれ, 89.6%, 33.0%, 70.3%であった. 精液検査正常群では妊娠群(430例, 85.0%)と非妊娠群(691例, 81.7%)との間に差はなかったが, 精子無力症(81.2% VS 65.3%), 乏精子症(62.1% VS 24.4%)では妊娠群と非妊娠群の間に有意差が認められた. 2029例中670例(33.0%)が62年9月までに妊娠した. ZSPT正常群(>70%), 中間群(30〜70%), 異常群(<30%), 陰性群(0%)の妊娠率はそれぞれ, 39.6%(485/1221), 36.0%(107/297), 22.6%(111/491), 0.6%(1/166)でZSPTの低下とともに妊娠率は明らかに減少した. 正常精液, 精子無力症, 乏精子症の妊娠率はそれぞれ38.3%, 31.2%, 22.6%で3者間に有意差が認められた(P<0.025), しかしZSPT正常群では, 3者の妊娠率は38.9%(333/855), 36.9%(94/255), 50.0%(58/116)で有意差はなかった. 同様にZSPT中間群(41.4%,29.9%, 27.9%), 異常群(27.7%, 21.6%, 20.3%)においても精液検査所見と妊娠率との間には差は認められなかった. ほとんど妊娠不可能なZSPT陰性は正常精液ではわずか0.3%であったが, 精子無力症では5%に増加し, 乏精子症では28.9%と著明に増加した. ヒト体外受精との比較では, ZSPTとよく担間し, ZSPT30%以下の場合はほとんど受精しなかった. 本研究の結果によりZSPTが精子の受精能力検査, ならびに男性の妊孕性の判定に極めて有用であることが明らかになった.
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