研究概要 |
私共は従来、視運動性ドラム内で振子様刺激を与え、誘発される眼振の緩徐相速度を分析し、視覚系・前庭系の相互関係を定量的・定性的に解析する視運動性・前庭性動眼反射検査として、臨床的にも応用し、小脳・脳幹障害の鑑別,末梢性前庭性障害の経過観察にも利用してきた。 今回、私共はこの検査システムに、振子様視運動性刺激を加えて総合的な振子様視覚系・前庭系相互関係検査として、マイコン制御による刺激負荷と、on-line実時間処理による分析システムを開発し、臨床的症例にも応用した。その内容は以下の如くである。 1)刺激制御信号は、制御装置に刺激の選択,開始・終了がDA変換器より送られるとともに、視刺激・振子回転刺激の速度などが駆動信号に送られる。また、OKNの眼前通過線条の信号は、AD変換器により送られてfeed backされるように配慮された。 2)従来の視運動性前庭性動眼反射検査が振子様回転により可能であるとともに、振子様回転によるOKN(pendal OKN)と前庭性動眼反射(vestibulo-ocular reflex,VOR)とによる相互加算機構としての視運動性前庭動眼反射(visual-vestibulo-ocular reflex,V-VOR)が計量されることが可能になった。 3)V-VORの利得分析が情報処理化され、正常人のVOR,OKN,V-VORの利得として計量され、この正常範囲に従って、病的症例の視覚系・前庭系の相互関係の評価が可能となった。また、末梢性めまい症例、例えば、メニエール病の内リンパ水腫の診断にも利尿剤により前庭反応の改善も評価できるので、めまい・平衡障害の鑑別診断,病態の追跡,病状の追跡に有用な検査体系として、臨床的応用が可能となり、今後の発展が期待される。
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