研究概要 |
我々は頭頸部悪性腫瘍患者について術前治療として放射線照射と化学療法を行い、術後治療として再発防止の目的でα型interferon(IFN)とimmunopotention(OK-423)を併用して来た。α型IFNとの併用によってOK-432で誘導されるγ型IFN産生が増強されること、更に、この治療方法を行った症例の長期的臨床経過観察の結果、この治療を行わなかった症例に比べて再発例は減少することを報告した(Arch Oto-rhinolaryngol 243:281〜287,1986)。この治療方法は末梢血中のNK活性を上昇させ、IL-2-R陽性細胞が出現し、白血球の減少を防止する(Recent advances in chemotherapy,University of Tokyo Press P1256〜1257,1985,Immunopharmacological aspects of OK-432 in humans Excepta Medica P161〜173,1986)。これらのことが再発防止に有効であろうと考えられる。これらの治療法を再発防止だけでなく、積極的に癌の治療法に用いるため、術後再発した頭頸部癌重症例や、始めから遠隔臓器に転移した症例に、局所ではhyperthermia併用放射線照射を行い、全身的には化学療法とα型IFNとOK-432の投与を行う。放射線照射や化学療法による白血球減少と免疫機能低下をα型IFNとOK-432の併用によって防ぐことを目的にしている。その基礎的研究として上顎癌から樹立した培養癌細胞を用いてhyperthermia(42゜Cあるいは43゜C1hrの熱処理)と放射線照射の併用の効果について調べ、放射線照射によってS期が延長し、分裂が抑制された細胞が熱処理によって死滅されることを報告した(Progress in hyperthermic oncology,Shinohara shupan P72〜73,1986)更に、放射性耐性細胞(上記の上顎癌由来癌細胞に何度も放射線照射を行って10Gy照射で死滅しない細胞株を作った)に対してもhyperthamiaの効果は同じであることを報告した(第3回日本ハイパーサーミア学会,大阪1986.11月)。臨床的には頸部リンパ節転移病巣に対してhyperthermiaと放射線照射の併用を行い、腫瘍の大きさが5cm以上の症例では、放射線単独照射より有効であることを報告した(第8回日本頭頸部腫瘍学会,九州1984・6月)。
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