研究概要 |
唇溝堤として、歯胚が形成される際、その唇側に上皮帯の陥入がある。これが将来どのように口腔前庭となっていくのか、その過程の詳細な研究はない。そこで、ラット胎仔,新産仔をもちいて、唇溝堤の初期発生から、口腔前庭へ変化する過程を経時的な形態変化,細胞レベルでの変化から観察した。 (1)胎生12.5日から生後11日までのラット頭部連続光顕切片より下顎領域をトレースし、パーソナルコンピューター用画像解析装置に入力して、下顎概形,唇溝堤,切歯部歯胚,メッケルの軟骨,下顎骨などの三次元像を復構描画させ、各時期でのこれらの位置関係,三次元的形態などの変化を観察し、(2)その過程で上皮帯である唇構堤から溝が形成され口腔前庭となる際の細胞の変化,分化を光顕,電顕的に観察、吟味した。(3)その際にみられた生理的細胞死の出現の時期,その時期での唇溝堤の形態変化,細胞の変化などを形態形成,細胞分化と関連づけて考察した。(4)頬の発生過程でも生理的細胞死が観察されたので、特に細胞の死より小体となり、処理される過程を形態的に詳しく電顕的に観察し唇溝堤でのそれと比較検討した。ラットの唇溝堤は切歯歯胚とほぼ同じ時期にその唇側に左右別々に出現する。その後前方部から接触し始め歯胚を包み込むようにして咽頭側へ延びてゆく。唇溝は上皮帯の正中線に沿った領域が対称的に、将来溝となる部分の細胞が、それぞれ角化して空隙ができ、口腔粘膜と連続して口腔前庭が形成される。その際、取り残された部分が、いわゆる小帯になると思われる。また、溝になる前にこの領域に細胞死が出現し、その後分化した細胞へ置き変わっていたが、死んだ細胞は遊離し、分断され、小体となって最終的に隣接正常細胞に取り込まれていた。これらのことを組織化学的にレクチン,ケラチン抗体等を用いてこの領域での変化を検索しようとしたが、今回は成果がなかった。
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