研究概要 |
味蕾細胞の骨格をなす微小管および5nm径と10nm径フィラメントについてdd-マウスの有郭乳頭味蕾を用いて検索した. 1.微小管は味蕾のI型(支持)とII型細胞では胞体頂上部に夛く, III型(味覚受容)細胞では胞体全体に夛数分布する. 抗微小管剤のコルヒチン投与により, I型細胞ではゴルジ野からの分泌顆粒の運搬が阻害され, 胞体頂上部から分泌顆粒が消失した. コルヒチンとモノアミン前駆物質を合わせて投与すると, III型細胞ではモノアミン螢光の消失が遅延し, 神経伝達物質を含むと推定されるモノアミン小胞が胞体全体に増加し, シナプス部位への移動が妨げられた. 2.抗アクチン抗体を用いて螢光抗体法を行うと, 味蕾の味孔部分に限局して陽性反応が認められた. 透過電子顕微鏡により, 味孔部の微絨毛様突起から胞体頂上部に伸びる5nm径の直線状のフィラメント束が観察され, heavy meromyosinを作用させると, これらのフィラメントに矢じり構造を認めた. すなわち味孔部の5nm径フィラメントはF-アクチンである. 3.(1)味蕾細胞の10nm径フィラメント束の集合状態は, 周囲上皮細胞と違ってまばらな束を作る. しかしIII型細胞は, I, II型細胞よりも比較的稠密な束を作る. (2)ウシ鼻口部上皮とヒト皮膚角化層由来の抗ケラチン抗体を用いてPAP法を行うと, すべての味蕾細胞は周囲上皮細胞と同じく陽性を示した. このことから味蕾細胞の起原は周囲上皮細胞であり, 神経外胚葉起原説は否定出来る. (3)分子量45kDのケラチンに反応するブタ腎上皮由来の抗体により, 味蕾細胞の大部分が陽性を示したが, 基底(幹)細胞と周囲上皮細胞は陰性であった. 生後0-1日の幼若マウスの検索から, 味蕾の基底細胞が分化して細長い細胞になると, 胞体の10nm径フィラメントは減少し, 稠密な束からまばらな束に変化し, 同時に分子量45kDのケラチンを含有するようになることがわかった.
|