研究概要 |
本研究補助金による「特異的単一クローン抗体の歯周疾患診断学への応用」は, 成人性歯周疾患の病原性細菌とされるB.gingivalisに対する特異的な単一クローン抗体を用いB.gingivalisが真に成人性歯周疾患の病原性細菌であるか否かを極めて特異性の高い抗体を用い免疫学的手法により詳細に検討し, この特異的単一クローン抗体が成人性歯周疾患の診断の一助になり得るかについて検討することを目的とし企画された. 3年間に渡る研究結果は, 今後解決しなければならない一つの重要な課題を残した. すなわち, 成人性歯周疾患患者の血清中の黒色色素産生Bacteroidesに対する抗体価を調べたところ, B.gingivalisに対するそれは本患者の進行度と正の相関関係を示したが, 歯肉縁下プラークからはB.gingivalisは殆ど分離されなかった. 一方, 本患者の進行度と正の相関関係を示さないB.intemediusが極めて高い頻度で分離された. しかしこの分離頻度はその進行度とは全く相関関係を示さなかった. この相反した結果が何に基因するのかを明らかにすることはB.gingivalisが真の成人性歯周疾患病原性細菌であるか否かを明らかにする上で重要である. この問題に関してはいくつかの可能性が考えられる. (1)B.gingivalisが感染・増殖した後, 歯肉縁下プラーク中の他の歯周疾患関連細菌との競合現象によりその増殖が阻害されたがために分離されない. (2)B.gingivalisは歯周ポケットのある特定の環境条件に存在していることの可能性-すなわち歯肉縁下プラーク採取について詳細な検討を要する. (3)歯肉縁下プラーク中のB.gingivalis量を血液寒天上のコロニーとして反映されているか?, この点に関しては培養しないで直接歯肉縁下プラーク中の細菌の種類量を決定できる方法を開発することが重要である. 以上の問題を今後さらに検討する考えである.
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