研究概要 |
前年度、凝集活性を検索したレクチンの中で、多くの口腔細菌に活性を示したコンカナバリンA(ConA)を用いて菌体との相互作用を定量的に検討した。ConAはRI標識した[acetyl-【^3H】]ConAを用い、菌株はConAによって凝集したS.sanguis ST3,A.viscosusT14Vと対照して凝集しないS.mutansFA1を選んだ。[結果]1.両菌株とも結合量は低温(4℃)の方が少く、反応時間60分でプラトーに達した。2.作用させるConAの濃度を高くすると、菌体への結合量は増加した。しかし、FA1株はほとんど増加しなかった。3.培地の影響:S.mutansの血清型a〜gの各株とST3株をBHI培地およびTodd Hewitt培地で培養して、ConAの結合量を比較した。B13(d)以外の7株はいずれもTHB培養の菌が多量のConAを結合した。これはTHBが天然に微量のスクロースを混在するとされており、生成したグルカン量の差が影響しているものと考えられる。4.菌体表層のリセプターの性状を知るため、菌体を種々の方法で処理し、凝集能の変化を調べた。ST3はデキストラナーゼおよび非イオン性界面活性剤の処理により凝集能を失った。これから菌体表層の糖質あるいは膜に関連した物質の関与が考えられる。T14Vは、この他にトリプシンや熱処理によっても失活したことから、タンパク質の介在も推定される。5.菌体と結合したConAはいかなる糖質によって溶離するかを調べたところ、グルコース,マンノースに加えてフルクトース,N-アセチルグルコサミンによっても高い割合で脱離した。以上の結果から、ConAの作用するリセプターに限定して考えても、S.sanguisとA.viscosusという菌種の相違によって、同様の凝集を示す菌でありながら全く異ったリセプターを有しており、菌の付着さらにプラーク形成の問題の複雑さ、多様性が明らかとなった。今後、菌体の側とレクチンの特異性の両面からさらに詳細な検討が必要であると考えられる。
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