研究概要 |
本研究では臼歯部用コンポジットレジンに関する歯質との接着強さについて新しい試験法を提示した. 通常のせん断試験法に比べ, より臨床に近い条件で試験するため, 本試験法は円柱形窩洞にコンポジットレジンを充填し重合させ, その後圧子で押して接着強さを求める方法である. その結果, 新しい打ち抜き試験法により得られた接着強さは, 象牙質で1.31MPa, エナメル質で5.82MPaとなり, 従来のせん断試験法に比べそれぞれ46%, 26%に低下する. これは重合収縮による寸法変化が大きく関与している. それを明らかにするため, コンポジットレジンと歯質との接着界面に重合収縮によって生じる残留応力を計算によって求め, 残留応力の高いことが明らかとなった. また, その残留応力により界面でのはく離が生じ接着強さの低下となっていることを確認した. 繰り返し荷重により臼歯部用コンポジットレジンの接着耐久性試験を行なった. 箱型, 箱型ベベル付き, 皿型, 皿型ベベル付きの4種類の窩洞に対し通常の一回で充填する方法と, 2回に分けて充填する方法を用いて, コンポジットレジンを充填した. そして充填されたコンポジットレジンに繰り返し圧縮荷重を加え, 色素浸透試験を用いて接着耐久性の評価を行なった. その結果, 繰り返し荷重により辺縁封鎖性は劣化することが分かった. 箱型と皿型窩洞を比較すると皿型のほうが良好な辺縁封鎖性を示し, ベベルの付与により窩洞とも耐久性は向上することが明らかにされた. また, 2回に分けて充填しても1回充填法に比べ耐久性の向上がみられないことが示された. このように, 本試験法は, 臨床に近い条件を満足させており, したがって, コンポジットレジンの接着強さ及び接着耐久性は臨床に類似した結果として評価できることが分かった.
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