研究概要 |
1.ラット下顎切歯歯肉縁上の唇側面にラウンドバーで円形窩洞を形成し、裏層せずに接着性コンポジットレジンあるいは酸化亜鉛ユージノールセメントを充填した。術前21,17,10日,術直後,術後4,8日でEDTA鉛を腹腔内に注射し、処置後9日で動物を屠殺して被験歯を顎骨ごと取り出し、ホルマリン固定後硫化水素飽和の塩酸により脱灰し、凍結切片を作製して検鏡した。 その結果、処置前に投薬した鉛塩による沈着線は象牙質内で認められたが、窩底象牙質内に処置後に投薬した鉛塩による沈着はみられなかった。また歯髄腔は狭く組織学的な観察は困難であった。これらのことが修復処置による影響か、ラット切歯の発育によるかを現在検討中であり、縦断切片による観察、実験に適した過齢のラットの選択等の手段を講じて例数を追加した後結果を発表したい。 2.成犬の上下前臼歯歯肉縁上1mmの唇側面に円形窩洞を形成し、接着性コンポジットレジンを充填した。半数例は無裏層のままとし、残りの半数にはライニングセメントで裏層を行った。また同一条件で形成された窩洞に酸化亜鉛ユージノールセメントを充填したものを対照とした。処置直後および処置後1,2,3,4週間でEDTA鉛を静脈内に注射し、処置後5週間で動物を屠殺して凍結切片を作製後検鏡した。 その結果;歯髄の組織学的観察は可能であったが、周囲の象牙質内に鉛線の沈着は認められなかった。この原因として象牙質の形成量が極めて少ないか、鉛塩の投与法に不適切な点があったことが考えられ、今後は酢酸鉛の使用を含めて鉛塩の投与法の改善を試みながら象牙質の形成量をより確実に把握し、ラット切歯の実験結果と対比しながら結果を近日中に発表していく予定である。
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