研究概要 |
義歯補綴による咀嚼能率を客観的に判定するため, 光吸収ライトブロッキング方式(光遮断方式)による粒度分布測定方法に着目し, 昭和60年度はJIS標準試料(ポリエチレンラテックス素粒子, ケイ砂, ガラスビーズ)および機械粉砕生米試料を対象としたCMH-60(0〜60μm)では微粒子の分布に, 精度が高いことを立論した. 更に昭和61年度および62年度にかけては完全吸水生米を試料として, 咀嚼回数と粒子径の粒度分布との関係を明らかにする目的で, 咀嚼回数5-70回の範囲での咀嚼実験を行なった結果, 以下の結果に至った. 咀嚼は, 微粒子径よりも大きい粒子径の検討が咀嚼能率の判定には必要であると考え, E-2500センサーが適用され得ると思われる. したがって咀嚼回数が少ない場合には大粒子側に分布がみられることから, 測定範囲の大きいE-2500センサーのほうが, 測定範囲の小さい側のCMH-60センサーよりも粒度分布を幅広く測定することに有効な方法であると考える. しかも平均粒子径を基に検討する方が望ましく思われた. E-2500センサーに於て8mesh篩上に粉砕生米が残留しなくなる咀嚼回数は, 20回咀嚼で約99%, 30回で100%が測定レンジ内に入ることから, 義歯での測定に於て20回ないし30回咀嚼時の平均粒子径の分布状態を測定することにより, 能率の判定の目安にすることが可能であると考えられた. したがって, 光吸収ライトブロッキング方式による咀嚼能率の判定法は, 内外の歯科医学での文献に報告はなく, 義歯工作, 殊に将来我が国が高齢化社会での老人補綴医療に於いても, 迅速, 簡便しかも正確な咀嚼能率測定法の確立が要求されている現今, 初期の目的達成のための基礎研究の成果を挙げ得たものと考える.
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