研究概要 |
ヒトの外側翼突筋の機能が明らかでないのは本筋が深部にあり筋電図誘導が難かしいことである。我々は本筋の筋電図記録をハリ治療用のハリ(直径0.27mm、長さ40mm)を用いて下顎切痕部から30〜35mm刺入する方法を日本神経学会誌28巻6号に報告した。研究期間中有歯顎者10人について左右外側翼突筋と側頭筋後部の筋電図とMKG下顎運動曲線を同時記録した。被検者の内5人は太臼歯部ガイドや滑走中に咬頭干渉があった。本研究は前方・側方滑走時の外側翼突筋の筋活動様式を正常ガイド時と咬頭干渉のある場合を比較検討した。[結果]1.正常な前歯犬歯によるガイドによるスムーズな滑走,動時の筋活動の特徴(1)前方滑走運動開始に同期した両側外側翼突筋の筋活動の同期的活動,移動量の増大に伴う筋活動量の増加によるスムーズな筋活動エンベロープ(2)前方位から後方移動,後方位から前方移動時の側頭筋との電位の切り変わりが明確であること、とくに前方位から中心咬合位の復帰路で外側翼突筋の電位の消失があること。(3)側方滑走移動では対側外側翼突筋の主働的活動と同側側頭筋後部によって営まれ、より複雑な両側性協調か観察された。滑走中では同側外側翼突筋の活動の停止がスムーズな側方移動に重要である。2.太臼歯ガイドや滑走中の咬頭干渉かある場合の筋活動の特徴。(1)前方・側方運動時の下顎運動経路の乱れて符合して本品の活動の停止と発現が観察され、その結果として筋活動のエンベロープが木現側となる。(2)前方位からのまた側方位からの中心咬合位への複帰路移動で正常ガイドで観察された外側翼突筋の筋活動の停止がなく、活動電位が持続した。(3)異常筋電図としての筋緊張性電位や群化放電が時として観察された。以上の結果から咬頭干渉が在存すると、外側翼突筋は歯の強い衝突回避や顎関節の損傷を防ぐため、下顎の運動とりわけ速度コントロールを行ない、顎機能の恒常性に重要な役割を果していることが立証された。
|