研究概要 |
歯科小手術の酸素消費量, 炭酸ガス排出量, 肺換気および心機能に及ぼす影響を明らかにする目的に検討を加え, 以下の結果を得た. (1)歯科用局所麻酔薬の健康成人に対する影響;エピネフワン含有リドカインの口腔内投与後には, 添加されたエピネフリンによって酸素消費量, 炭酸ガス排出量および分時換気量が増大することが明らかになった. また左室収縮時相の変化により, 心機能も亢進することが示唆された. さらに内分泌ホルモンノ変化では, インシュリン分泌は一般的な低下を示したが, ACTNやコルチゾルはほとんど影響を受けていないことが明らかにされた. しかし, これらの変化は極めて僅かであり, しかも実際の臨床使用量よりやや多めの投与で観察された結果である. 従って健常者に対する影響は小さいと考えた. (2)歯科小手術の健康世人に対する影響;手術中には, 酸素消費量, 炭酸ガス排出量, 分時換気量の軽度の増加が認められた. また左室収縮時相の検討からQの減少とPEPの短縮が認められ, 術中の心機能の亢進が示された. 一方, これらの変化は, 静脈内鎮静法を併用すると抑制されたことから, 生に手術に対する精神的ストレスに起因することが示唆された. (3)歯科小手術の高血圧症患者に対する影響;高血圧症を有する患者においても, 術中に静脈内鎮静法を用いると, 局所麻酔や手術により影響を受けず, 健康成人の場合に観察された結果と同様の変化を示した. 従って, 静脈内鎮静法が高血圧症患者に対しても有効であることが, 酸素消費量, 炭酸ガス排出量, 肺換気および心機能の面からも示唆された. 今後は, 〓血性心症者や脳血管障害, あるいは糖尿病や甲状腺機能障害などの全身疾患を有す患者を対象にして, 検討を進めて行く必要があると思われる.
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