研究概要 |
頭頸部癌患者の免疫能判定の一環として、リンパ系細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体(OKシリーズ、及びLeuシリーズモノクローナル抗体)を用いて口腔癌患者の末梢血及び癌組織内リンパ系細胞亜群の解析を行った。全身免疫能は末梢血リンパ球を調べた。84名の口腔癌患者中、経過良好群(経過良好1年以内,1-3年,3-5年,5年以上)ではOKT4(ヘルパー/インデューサーT細胞)が減少した。反対に、経過良好1年以内,3-5年,5年以上の各群においてOKT8(サプレッサー/サイトトキシックT細胞)は増加し、その比OKT4/OKT8は低下した。一方未治療群,再発群では、OKT4もOKT8も正常者群値の範囲内であった。このことは癌に対する集学的療法、特に放射線療法、化学療法がT細胞に影響を及ぼしたことを示唆していると思われる。OKT4/OKT8比は全身免疫能を反映しているものとしてしばしば用いられ、又予後良好例は正常免疫能を回復すると言われているが本結果はOKT4/OKT8比の臨床応用-全身免疫能の判定(指標)-に検索の余地を残した。一方局所免疫能は癌組織浸潤リンパ球を調べた。18例の口腔癌生検凍結標本中、15例はLeu-1(汎T細胞)がHLA-DR(B細胞)より多く存在した。この15症例中、Leu-2a(サプレッサー/サイトトキシックT細胞)がLeu3a+b(ペルパー/インデューサーT細胞)より多く存在したのは2例、Leu3a+bが多く存在したのは8例、他の5例はLeu2aとLeu3a+bがほぼ等しく存在していた。又、Leu3a+bが多い症例では、ステージ【III】,【IV】の進行癌が多く見られた。このことは、Leu2aは局所において、癌細胞殺細胞効果をもたらすという可能性を示唆している。
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