研究概要 |
フォスフィンおよびフォスファイト類の求核試薬共存下での電解酸化を検討し、以下の結果を得た。 1.トリフェニルフォスフィンラジカルカチオンと炭素求核試薬であるオレフィン類との反応より、次のような合成化学的に興味あるフォスフォニウム塩が生成することを見出した:1-アルケニルトリフェニルフォスフォニウム塩,アリールトリフェニルフォスフォニウム塩,3-オキソトリフェニルフォスフォニウム塩,β-ケトトリフェニルフォスフォニウム塩。また1,3-ジカルボニル化合物との反応では、条件の選択により、相当するジケトフォスフォランが生成することを見出した。なお、これらのフォスフォニウム塩の合成は、通常の方法では、数段階の反応を要するものが多いが、電解法を用いることにより、一段階での合成が可能である。 2.トリブチルフォスフィンとジスルフィドを用いるチオアルコキントリブチルフォスフォニウム塩の簡便な合成法を確立した。既知の方法によっては、チオメチルおよびチオエチル基を有するもの以外の合成は困難であったが、本法では種々のチオアルコキシ基を有するフォスフォニウム塩が、一段階の反応によって容易に合成される。得られたチオアルコキシフォスフォニウム塩は、チオールエステルおよび非対称ジスルフィド合成の有効な試薬となることを明らかにした。 3.酸化電位が比較的高いトリアルキルフォスファイト類を間接電解酸化しうるメディエーターを検索した。しかし、現時点では、ジスルフィド類およびある種のチオ尿素にこの可能性が見出されているのみであり、これについてはさらに研究の続行が必要である。 この他、フォスフィン-チオジアン酸系の電解酸化の合成反応への応用の可能性が見出され、現在引続き検討中である。
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