研究概要 |
栄養繁殖性薬用植物のうち、アカヤジオウは特にウイルス感染率の高い植物で、現在本邦で栽培されているほとんどの株が感染しており、このため生育不良による収穫量低下や代謝異常による品質の低下が危惧される。このため茎頂培養を応用したクローン増殖法を確立した。本法によれば通常株に検出されるタバコモザイクウイルス(TMV)ノヒモ状ウイルスおよび球状ウイルス類は検出されず、ウイルスフリーのクローン苗の大量増殖を可能にした。この研究成果を基に、ウイルスフリー株,通常株の比較栽培試験を行った結果、収穫量はウイルスフリー株が3倍強でその有用性が確認された。また、TMVについてはELISA法による再感染の経年変化を調査した結果、栽培2年目で27%、3年目で31%、4年目で63%と年々上昇することを明らかにし、栽培方法や新苗の更新時期に示唆を与えた。次に二次代謝産物のうち特徴的な成分である、イリドイド類の定量法を確立し、ウイルスフリー株,通常株,また、ウイルス感染株に多い菌類罹病株についても定量を行った。その結果、ウイルスフリー株と通常株では大差はないものの、菌類罹病株で主イリドイド類であるcatal polをはじめrehwannioside C及びleonurideが消出し、他のイリドイド類も含量が低下するという顕著な変異を見い出した。また、ウイルスフリー株や通常株では認められない2種のフエクール化合物を単離し、構造決定を行い、acteosideと6'-O-galactosylacteosideであることを明らかにした。これら2種の化合物はストレス化合物で、さらに抗菌性を有することから、アカヤジオウ根茎のファイトアレキシンであることを証明した。以上ウイルス感染が二次代謝におよぼす影響は比較的小さいものと推察されるが、ウイルス感染により菌類罹病率が上昇し、間接的に著しい二次代謝異常を惹起することを明らかにした。
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