研究概要 |
柴田等はラット糸球体基底膜より糖ペプチドであるネフリトジェノシドを単離,精製し、このものが唯一回の注射により直接腎炎疾患をひきおこすことを見い出した。本研究はこの腎炎惹起物質の未だ判明していないペプチド部分を中心として構造を確定すると共に、種々のモデル化合物を合成することにより構造活性相関の検討を行うことを目的とした。ネフリトジェノシドを樹脂処理し、特異的にアミド結合を開裂させることにより得られたペプチドをApplied Biosystems model 470Aにて、アミノ酸シークエンスを明らかとした後、ネフリトジェノシドにカルボキシペプチターゼYを作用させ、sephadex G-100にてゲル瀘過を行い六画分を得、各々を酸水解後、アミノ酸分析,糖分析を行うことによりネフリトジェノシドは、グルコースよりなる三糖部分が2個のアミノ酸よりなるペプチドと直鎖型でN末端のアスパラギンを介してα-N-グリコシド結合したGlcα-(1→6)Glcβ-(1→6)-Glc-α-Asn-Pro-Leu-Phe-Gly-Ile-Ala-Gly-Glu-Asp-Gly-Pro-Thr-Gly-Pro-Ser-Gly-Ile-Val-Gly-Gln という構造であることを明らかにした。次いでネフリトジェノシド類似化合物の合成の一環として、三糖グリコシルアミン体にdipeptide,pentapeptide,hexapeptide,octapeptideを縮合させた糖ペプチドならびに牛血清アルブミン(BSA)を縮合させた半合成糖タンパクの合成を行った。我々はすでに三糖にアスパラギン,グルタミンを縮合させた糖ペプチドは腎炎惹起活性を有していることは明らかにしており、今後、ネフリトジェノシドの全合成を行うことを通し、これら合成品の腎炎惹起活性を検討することにより、活性基の最小単位を決定すると共に、糖部分の修飾等を行い、各種ペプチドの構造活性相関について検討を加えるなかで、拮抗物質を検索することにより、慢性腎炎治療の足掛かりを追求するつもりである。
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